ノベラボグランプリ第2回最優秀賞受賞作品
ネットカフェからSOSを打った。阿久田新一は25歳。
ストレスで休職して3ヶ月。金がない。家もない。家族も友もない。なぜか、命だけはあった。
拾われた先で見つけた「奇妙な仕事」。リストカットの跡に絵を描く“傷絵師”稼業だ。
やりたいことなど別にない。生きることも、死ぬこともイヤだった。誰かの傷を塗りつぶすたび、この空よりカラッポな自分が変わるはず……。そう信じてしがみつく、終わりのない日々。
すべてを変えたのは、消えたはずの幼なじみだった。
「お袋の手術跡に大きな樹を描いてくれないか。もう先が長くない」
……キズだらけの手で世界に贈る『大嫌い。でも愛してる』