「冷え性」と「脂肪吸引」。いま文学界が最も注目する才能が放つ身体性に根差した問題作!
主人公の不機嫌さは極端な冷え性ゆえで、よく読むと類型的な「不満持ち」ではない。気まぐれな「親切」が身体に激変をもたらす一夜を経て、劇的な面白さをもたらした。(「ケチる貴方」野間文芸新人賞選評より)――長嶋有
私は寒いとき必死だ。こんなにも必死なのに、何故この身体は頑なに熱を生産しないのだろう。
骨と皮ならまだしもお前はエネルギーの塊じゃないか。私の代謝機能よ。この身体を温める薪ならここに山のようにあるよ。
頼むからケチらず使ってくれないか。(「ケチる貴方」より)
第44回野間文芸新人賞候補となった表題作と
第38回大阪女性文芸賞受賞作を豪華同時収録。
私の脚は、生来、人並外れて太かった。その程度を定量的に示そう。その周囲、五十八センチ。
(中略)私は自分より脚の太い人を、ついぞ目にしたことがなかった。(「その周囲、五十八センチ」より)
自己肯定と自己否定の相矛盾する狭間の中で生きる人の心を描いて大成功している。
(「その周囲、五十八センチ」大阪女性文芸賞選評より)――町田康