「これはおれの子ではないのかも知れない」為景は思った。生まれた赤ん坊は、輝きの強い眼を持つ男の子で、虎千代と名づけられた。のちの謙信である。百姓出の娘松江、忠臣金津新兵衛らに守られて育ち、14歳で春日山城での防戦に初陣を飾った景虎は三条勢を次々に打ち破り、毘沙門天を熱烈に信仰、女を近づけず、律僧のような日々を送るが、兄晴景は、その名声の高まりに不快の思いを強めてゆく。やがて兄は弟を暗殺するために忍びを放ち、景虎は20歳で兄を倒して春日山に入城、長尾家当主となった。父を亡くした景虎は、武田晴信が北進に進攻してきたことを知る。両軍の対決が繰り返されるなかで将軍の権威は失墜、政情はますます不穏の気配を見せていく。そして永禄4年、上杉・武田両軍は川中島で一大決戦の時を迎えるが・・・・・・!※本作品は「天と地と」シリーズ全5巻を収録しています。※本商品は1冊に全巻を収録した合本形式での配信となります。あらかじめご了承ください。