集中治療室で、医者に向かって訴える妻――「最後の時間は、二人だけにしてください」だが夫の先輩刑事である黒木――「しかし……」「黒木さん、心配しないでください。決して、おかしな真似はしませんから」「奥さん、本当に大丈夫ですか?」「はい。ただ、二人で誰にも邪魔されずに過ごしたいのです」笑みさえ浮かべてそう告げる妻。黒木の胸に、熱いものがこみ上げてきた。そして、この夫婦をこんな不幸に叩き落した元凶でもある自分が、二人のために今できることは、妻のこの願いを受け止めてやることしかない――そう思い直した。(作中より)