あらすじ時は江戸。簪や化粧品を扱う問屋の娘の紫津は十七歳。母は紫津の結婚相手選びに余念がない。紫津が想うのは、生まれて間もない頃からそばにいる二十六歳の手代の恭治。あと一年、二年で紫津は結婚相手を決め、恭治は番頭になり家を持ち所帯も持つようになる。それまで、ずるくても、わがままでも、恭治を困らせてもそばにいたい。恭治が番頭になることが決まり、許婚もいるようだと知った紫津は、「もう少しだけ、一緒にいて」と懇願し、恭治は「わかりました」と紫津を抱き締め……。