「……共に支え、その愛に偽りなきことを誓いますか?」
「ち、誓います」
教会で誓いの言葉を口にしながら、クリスは一体どうしてこうなったのかを考えていた。
騎士の名門ヒルデブランド家は男児に恵まれず生まれた子はすべて女児だった。
それゆえ、当主は五女であったクリストハルトを“長男”として、代々伝わる剣技を教え、立派な騎士へと育て上げた。
一方で、ファーレンベルク王国第一子のジークリンデは、出生時「王子であれば国を滅ぼす」との不吉な予言をされ、男児でありながら王妃によってそれを秘匿され、“王女”として育てられていた。
王都でジークと運命的な出会いを果たしたクリスは、「互いの秘密を守るために結婚しよう」と持ちかけられ、承諾してしまう。しかし、城には国家転覆を企む影がうごめいていた。
男として育てられた令嬢、女として育てられた麗しい王子。同じ秘密を持つ二人の契約は恋へと変わるのか?