「必ずや、金持ち貴族の愛人の座を、獲得してみせるんだからっ!」
8歳の冬、両親は事故で亡くなり、実の叔父に財産を騙し取られた侯爵令嬢フルール。無一文となった彼女の面倒を見てくれた唯一の存在は、養育係を務めていたばあやだった。
しかしフルールが17歳になった年、ばあやが病に倒れてしまう。
食堂の下働きという、実入りがよくない仕事で日々を乗り越えてきたフルール達には入院費を捻出する余裕もなく、途方に暮れていたある日、フルール宛に王宮から大舞踏会の招待状が届いた。
当の昔に庶民となった自分のもとに届いた招待状を不思議に思いながらも、入院費のために金持ち貴族の愛人になるべく大舞踏会に参加を決意した。
貴族の愛人なんて……。
――シロツメクサが咲く丘で出会った男の子との結婚の約束。そんな幼き日のキラキラと輝く美しい思い出も胸にしまい込んで挑んだ大舞踏会。
そこで出会った美貌の吟遊詩人のイルデに事情を話したところ
「あなたに愛人に必要な最上最高のテクニックを教えて差しあげられます」
彼の囁きに耳を貸してしまったことで、フルールの運命は大きく回り始める。
『いつか薔薇の褥で~吟遊詩人の一途な潤愛~(4)』には「あふれだす」~「いつか、薔薇の褥で ~Sideイルデ~」を収録