村山由佳氏、おすすめ!
「作家・中江有里の真摯な声が聞こえてくる。人生からは逃げられない、けれど人は変われる、と」
30歳の大倉玉青は、人材派遣会社に登録し大手通信系企業の受付として働いている。大学時代は、演劇サークルに所属していた。愛読書の『走れメロス』をバッグに放り込み、苦行のような満員電車に乗り職場へ通うのは、ただ生活のためだけだ。その生活が空虚で、何のために生きているのかわからない。彼女は、5年前の自らの選択が生んだ「秘密」を抱え、それに関わる者の存在を「希望」と感じながら、ただ日々を過ごしていた。
そんなある日、劇的な邂逅から生活が急転。玉青は思う。この出会いを、わたしは信じていいのだろうか――。
女優・作家・歌手として多彩な才能を見せる著者が、二人の女性の交錯を軸に現代的テーマに迫った、温かでミステリアスな物語。
『トランスファー』改題。
【目次】
同じ夢
極夜
世界は広い
振り向かない男
話してくれて嬉しかった
おやすみ 洋海
再びの夢
まだ、生きている
まだ死ねない
痕跡
〈巻末対談〉松井五郎(作詞家)×中江有里
歌手活動の再開は、この小説がきっかけだった