噺家・八代目林家正蔵(後の彦六)が残した膨大な日記より、昭和一六年一二月一日から二〇年八月三一日の記述を摘録。清貧に徹した長屋での暮らしぶり、謹厳実直で「トンガリ」とあだ名された反骨精神がにじむ活き活きとした筆致に、蝶花楼馬楽時代の名人の素顔が窺える。戦時下における東京下町の日常を伝える貴重な一級資料でもある。
目 次
おぼろげな父の記憶 花柳衛彦
優しかった父 藤沢多加子
昭和十六年(十二月一日から)
昭和十七年
昭和十八年
昭和十九年
昭和二十年(八月三十一日まで)
巻末エッセイ 林家正雀
他人様を思って生きた師匠
戦い抜いた師匠 文庫版刊行に寄せて
編者解説 瀧口雅仁
馬楽時代の戦中日記をまとめて
正蔵が確かな目で見続けたもの 文庫版のためのあとがき
登場人物・登場日付索引