この本は交響曲の十の名曲を選び、その曲にまつわる物語を記す歴史ノンフィクションである。いわゆるベストテンものは、何を選んでも、「あれがないのはおかしい」「これより、あっちだろう」というご批判をいただくのが宿命である。この本の選曲にもご異論のある方がいるだろう。選曲にあたっては、私の好み、愛聴曲ではなく、交響曲の歴史において重要と思う曲を選んだ。それだけですぐに二十曲くらいになり、何らかのタイトルが付いていて、知名度のあるものを優先させた。一話ごとに独立しているので、関心のある曲から読んでいただいてもかまわないが、順番に読んでいただき、その曲を聴いていただければ、「音楽史の流れ」が感じられるようにしたつもりだ。(「はじめに」より)<目次>はじめに交響曲とはどんな音楽か第一話 ジュピター 交響曲の最高神第二話 英雄 英雄になった交響曲第三話 運命 運命は扉を叩いた第四話 田園 田園の気分と情景が交響曲になる第五話 未完成 未完なのに名曲になった交響曲第六話 幻想 恋愛から生まれた交響曲第七話 悲愴 静かに終わる交響曲第八話 新世界 交響曲は大西洋を渡る第九話 巨人 姿を変え、名を変えた交響曲第十話 革命 大粛清から生まれた交響曲あとがき参考文献