世界が滅びてから、もうずいぶんと経った。ゆっくりと滅びゆくヒトの世界を眺めながら、その吸血鬼は今日も変わらず、旅を続けている。もし、あなたがその姿を目にしたら、立ち寄ってみるといい。荒野にサイドカーで現れる、お気楽に退屈な永遠を生きている「吸血鬼(ノスフェラトゥ)」を。そして彼女が引いている、世界の終わりまできっとそのままの、オールドファッションなコーヒー屋台を――。「一杯、いかがですか? ええ、面倒ごとでなければ、お付き合いいたしましょう」人類が黄昏から夜へと至る時代、不死の少女が語り継ぐ、少し悲しくどこか優しい、ヒトの終わりの物語。