教師として日本各地を訪れた小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)は、庶民生活の中にある「単純、善良、素朴さ」を愛す一方、西洋化を推し進める「新日本」に幻滅する。彼が見つめ、追い求めたものとは何か。横浜上陸から松江・熊本・神戸そして東京で亡くなるまで――八雲文学研究と邦訳の第一人者が、作品・書簡・講義録等から、十四年間の足跡と心の軌跡を辿る。いま、私たちが見直すべき日本文化を再発見するための八雲案内。はじめに――失われゆく日本の心を見つめて第一章 小泉八雲はなぜ日本にやって来たのか――漂泊・幽霊・ユートピア1 激情家・小泉八雲の生涯をたどる2 日本という永遠のヴィジョン3 八雲の松江 松江の八雲4 二つの日本ござ松江から熊本へ5 なぜ熊本を去ったのか第二章 教育者としての小泉八雲――想像力・共感・非個性1 教育への情熱2 教育における想像力とは何か3 語り部のかたりなす文学講義4 〈ゴーストリィー〉なものの響き合い――『怪談』と『講義録』の関連性第三章 小泉八雲が私たちに語りかけてくるもの――死者と生者の共同体1 原風景をたどるござ自伝的断篇が伝える霊的世界2 夢の小宇宙としての再話文学3 〈永遠に女性的なるもの〉をめぐって4 妖精たちの棲むところ小泉八雲略年譜 参考文献(参照した八雲関係の著作) あとがき――真・善・美へと向かう歩み