東京・恵比寿。裏通りの目立たない扉を開けて、急な階段を上がる。
と、そこには、外からではまったくわからない空間が広がっている。
「ほねラボラトリー」という不思議な名前のこの店には、
夜な夜なワインと、季節の味を求めて、愛好家たちが足を運ぶ。
店主の櫻庭基成郎は、一切の料理修業をしたことのない、異色の料理人。
フランス料理店のフロアからこの世界に入り、さまざまな店を渡り歩き、
独学で料理とワインのことを学び、店を開いた。
数多の著名人も愛するこの店には、お決まりのレシピがない。
櫻庭が一人で切り盛りし、四季はもちろんのこと、
日ごとに変わる食材の状態によって調理の仕方を変えてきたため、
いつからか、レシピを残すのをやめていた。
料理とともに提供するワインも、日ごとに異なる。
「このワインを飲んでもらいたい」からレシピが始まることもあれば、
「この食材をいちばん美味しく食べてもらいたい」から始まることもある。
本書では、そんな櫻庭の展開する独自の料理とワインのマッチングを
家庭でも応用しやすいレシピとともにじっくりと紹介。
その世界観の、ほんの一端ではあるが、「こんな組み合わせがあった!」という
驚きとともに味わってほしい。