不思議な島では野蛮な人間に似た生物たちがヤフーと呼ばれ、馬が人間の言葉をしゃべっていました。と、ここまでだと「ガリバー旅行記」そのままです。しかし船の復旧を船員さんたちに訊くと十年ほどだと言われました。けれども、若返りの薬があるので大丈夫だと馬の長老さんに言われます。と、その前にトーレンたちはヤフーより厄介な化け物退治をやってのけます。その光景のすさまじいこと! トーレンの軍事的側面がいくつか挿話されています。さらに話は飛んで、近くの島で孤立した新撰組を助け、一緒に訓練するなど、本来の小説の本分を忘れていると思われがちかもしれませんが、実は小太郎たちの世界は時間と空間は存在しないのです。無論、クロノスは存在しますが、カイロスの正体は不明のままです。とにかく、時計で測れる時間は存在しても、我々が生きているこの現世とは違う世界なのです。したがって、現実に存在した人間は、本当ならば出会わなかった人々とも生活します。そこがこのシリーズの根本です。そして人間の「光と影」の影を表象するのもこの物語の醍醐味なのです。この作品たちは絶対に後世に残る! だから、私は書くのである。レッシング「書物は人を博識にはするが、人間にするものではない。」