中世の騎士団の幽霊が、ヨーロッパの村にあらわれるという。彼らは四年に一度、閏年の二月二十九日の霧の濃い真夜中に、角笛が鳴るとともに甲冑姿のまま現れ、村の大通りを進んでゆくらしい…。ぼくはドイツ人の恋人とともに、勇んでその伝説の村へとやってきた。――奇跡は起こった! ぼくは茫然と立ちつくし、恋人も熱病にかかったようにふるえはじめた。が、なんということだ! そのときぼくの恋人が、ふらふらと彼らの後について歩きはじめ、そのまま姿を消してしまったのだ……。現実から夢幻へと広がるメルヘンと冒険の世界を描く表題作を含む全5編を収録。