四国香川の貧乏人の家に生まれた主人公の布施俊吉は、幼少の頃から、“ごじゃな奴”(無茶苦茶な奴)と敬遠され、かつ一目置かれる破天荒な男だった。エログロ・ナンセンスの時代といわれた昭和初期を背景に、俊吉の数奇な生いたちから純情な初恋、そして単身上京してからのさまざまな逸話まで、やがて満州国の出現から日中戦争突入へ――好色と奇抜な行動力で、暗黒の時代の渦の中を逞しく生きぬく俊吉の半生を、鮮やかな筆致で活写する。実在の人物と史実を存分に駆使して、実力派人気作家が描く、生きた昭和史ともいうべき痛快半世紀。