発達障害、うつ病、統合失調症――人はなぜ「こころの病」に陥るのか。疾患にはどんな種類があり、医療現場はいかなる課題に直面しているのか。客観的診断の難しさ、治癒可能な疾患までを「障害」と呼ぶ弊害、科学的根拠のない投薬への批判、精神鑑定の危うさなどを、数々の症例とともに紹介。冷静な学問的見地から、精神医学の「未熟さ」に警鐘を鳴らしつつ、多くの無知や誤解がつきまとう世界を基礎から解説する入門書。
第一章 精神医学と精神症状
精神医学の特色/客観的評価の難しさ/臓器としての脳 ほか
第二章 精神疾患の分類
精神医学の悪用/障害年金と不正受給/障害という誤解 ほか
第三章 精神科における診断基準
精神疾患の国際分類/ICD-10の特徴/DSM-5のカテゴリー ほか
第四章 精神医学の歴史
精神医療と収容/魔女裁判/フロイトの帝国/向精神薬とDSM ほか
第五章 統合失調症
幻覚と妄想/精神科に入院/統合失調症の類型 ほか
第六章 躁うつ病とうつ病
躁うつ病とは何か躁うつ病の分類/うつ病と薬物療法 ほか
第七章 発達障害
自閉症/言葉が遅い子/アスペルガー障害 ほか
第八章 精神疾患と犯罪
責任能力/殺人事件/恐怖か殺意か/「措置入院」の弊害 ほか
第九章 精神科とクスリ
向精神薬/薬の副作用/抗精神病薬/幻覚妄想状態 ほか
第十章 精神科と医療費
医療費の問題/医療崩壊/保険診療 ほか
※本書は、二〇一〇年八月に小社より刊行した『やさしい精神医学入門』(角川選書)を加筆修正のうえ改題し、文庫化したものが底本です。本書は2018年5月18日まで『やさしい精神医学入門』(角川選書)と併売しております。