タフな男であるはずだった。
ちょっとぐらいの骨折なら、
何もいわずにゲームに出ていくような男だった。
そしていつものようにプレイして、
けろりとしている男だった。
“鉄人”にふさわしいエピソードをいくつも残していた。
その鉄人の、心の内側は、
とてもナイーブで傷つきやすく、繊細だった。
それが見えたとき、
人はこの鉄人を好きになるのだろう、と思われた。
(「バットマンに栄冠を――衣笠祥雄の最後のシーズン」より)
衣笠祥雄、星野仙一、根本陸夫、東尾修、荒木大輔、落合博満、田淵幸一、江夏豊。
昭和のレジェンドの素顔に迫る、山際淳司・プロ野球短編傑作選。