「打たせずに打ち、相手を必ずKOする」。
その攻防一体となった美しく力強いスタイルが世界的な評価を呼び
ついには世界の強豪以外は上がることのできないアメリカの舞台に招かれた井上尚弥だが、
その強さ、激しさが知れ渡るほどに対戦相手、内なる炎を燃え上がらせてくれるような
強敵との対戦は遠のくようになってしまった。そして肉体の成熟に伴う極限の減量苦。
遂にチャンピオンベルトを返上し、未知なる強豪との交錯を求めて階級を上げる決断を下す…。
団体の分裂、階級のさらなる細分化によって「世界王者」の威厳は翳り、
また選手や関係者のスキャンダラスな言動によってボクシング人気も衰えた時代に突如現れた
日本ボクシング界の最高傑作の激動の一年を、尚弥を「怪物」たらしめる思考、濃密な家族との物語と共に描く。