資本主義国家が外部から収奪できなくなったとき、いったい資本主義はどうなるのか?
この問題意識から、日本を代表するマルクス研究者が主要著作を読み解いた講義録。
「グローバリゼーションが社会を上位均衡化させる」は、幻想だった。
実際に起こったのは中産階級の崩壊であり、下位均衡化(下の方で貧しくなる事)でしかなかった。
ネグリの帝国論とその課題から入り、アルチュセールからスピノザの思想を押さえたうえで、マルクスの主要著作を、「代議制民主主義が世界に普及している現在において、あえて近代市民社会を批判する」という視点から解題していく。
この挑戦、刺激的な読み解きは、資本主義が支配する世界以外を考えられない私たちの頭を解き放つ。
そして、まるで“中世かポスト現代か”というような、ナショナリズムや民族主義、原理主義が氾濫する現代社会を切り拓き、新しい世界を展望するきっかけとなるだろう。
文庫版まえがき
第一部 現代思想と<マルクス>
一章 アントニオ・ネグリの「帝国」の概念
二章 アルチュセール・ショック
三章 スピノザ革命
第二部 <マルクス>の著作を再読する
四章 現代社会とマルクス
五章 共産主義社会とは何か--『経済学・哲学草稿』の類的本質
六章 唯物論とは何か--フォイエルバッハテーゼの一一番
七章 たえざる運動としての共産主義--『ドイツ・イデオロギー』
八章 構成された価値と労働運動--『哲学の貧困』
九章 共産主義の亡霊と『共産党宣言』
一〇章 国家の解体--フランス三部作
一一章 オリエンタリズム
一二章 方法の問題--『資本論』と『経済学批判要綱』
一三章 社会運動とマルクス
あとがき