星も見えない真っ暗な夜。子ねこのぼくは、人間に捨てられた。ごうごうと低くうなる、
恐ろしい音がする闇の中、温かく抱き上げてくれたのは、ほこりと汗の匂いのする一人の男性だった……。
多摩川の河川敷で、ホームレスの“おっちゃん”に拾われた捨て猫のミーコは、同じくおっちゃんに拾われた白ねこのたまさんと、一人と二匹で暮らし始める。厳しくも温かい日々の中、良い人間も、悪い人間もいることを学び、少しずつ人との絆を深めていくミーコ。成長するにつれ、おっちゃんやたまさん、自分の家族を守ろうと考え始めるようになる。しかしその矢先、大型台風が河川敷を襲って……。「おっちゃんの大事なねこ」になるために、ミーコが選んだ決断とは……?
2007年に関東を襲った大型台風「台風9号」。その裏で起きた、温かくも悲しい感動の実話。
【目次】
その一 春
その二 青葉のころ
その三 夏
その四 秋
その五 台風
その六 台風のあと
その七 冬
その八 ふたたびの春
あとがき 寄り添いあう世界
※本電子書籍は、角川つばさ文庫『多摩川にすてられたミーコ』を改題の上、加筆・修正した文庫が底本です。