城もなく武士はわずか数十人。人口一万人余りの伊予小松藩には、江戸時代で唯一、150年以上も書き継がれた日記がある。互いに顔の見える小藩だからこそ、代々の幹部たちは私利を計らず誠実に藩政に取り組んできた。不作の兆しを把握し、大飢饉には一人の餓死者も出さなかった。領民の命を守ることが優先された、類をみない善政が日記から読み取れる。天災、幕府の圧政を乗り越えたもう一つの江戸時代がわかる貴重な記録。
※本書は二〇〇一年七月、集英社から刊行された『伊予小松藩会所日記』を改題し、加筆・修正して文庫化したものが底本です。
【目次】
第一部 武士の暮らし
小松藩のなりたち
小松藩の概略
会所日記
小松藩の財政状況
古証文
座頭への対応(一)
座頭への対応(二)
武士の減俸
藩士の食卓
藩札の発行
殿様在国
公儀測量役人
参勤交代
第二部 領民の暮らし
駆け落ち
不倫と情死
不思議の記述
女性と子供
領 民
娯 楽
目明し
盗品と暮らし
他領との交渉
善 政
泥 酔
海 防
越後従軍