わたしが受けた一つの衝撃から語りはじめたい。三年間中学校に行かなかった少女からの手紙がわたしに届いた。少女の文章には一個人の体験にとどまらず、「教育」というもの、さらには人類の行く末までに至る問題が含まれていたのだ。怒りを怒りとしてではなく、すべての怒りを海に注ぐ水のごとくに、未来を見据えて語ったその静けさが、私たちの胸を深く、そしてつよくたたく。表題作の他、子供の詩、島での暮らし、北朝鮮訪問、人生で巡り会った人たち、あれこれの本などを巡る灰谷健次郎のエッセイ集。子どもの心、いのちの行方を真摯に見つめ、深い示唆に満ちた一冊。