「本当に今だから言うけれど、あなたはおそらくダメだと思ったの」
ジュリア先生が口火を切った。
「とにかく出来上がっちゃってたから。ポップスをやるときの癖っていうのかな、それが全て支配していて、これを壊すのは大変だろうなと思ったの。でも今はそのときのことを笑い話にできる」(本文より)
アメリカに来て4回目の冬。大江千里はニュースクール大学ジャズ科の卒業を1学期延ばし、その間にやることを箇条書きにしてみた。オリジナルジャズを作る。NYでバンドを組みライブをやる。レーベルを立ち上げる。ビザを申請する。まずは、ビザだ。F1ビザ(学生ビザ)、OPT、アーティストビザ、グリーンカード。すべてに可能性を賭けて、弁護士のピーターを訪ねた。卒業直前、緊迫の第11弾!【読了時間 約22分】
大江千里・おおえせんり■1960年9月6日大阪生まれ。1983年デビュー。2008年、ジャズピアニストを目指し愛犬ぴを連れてNYの音楽大学へ留学。ジャズアルバム『boys mature slow』『Spooky Hotel』をリリース。東京ジャズ、ブルーノート出演のほか、現在は米国を中心に積極的なライブを展開中。日本家屋体験エッセイ『僕の家』全4冊、NYジャズ留学の前半を綴った「9th Note」シリーズは電子単行本『9th Note Complete』としても配信中。2015年2月14日には3rdアルバム『Collective Scribble』発売決定!