僕は頑に会社にこだわっている。その執着に自分でも唖然とする。僕は会社を作りたいのだ、そう思うしかなかった。シンプルな明確な気持ち。僕はそれをやりたいのだ。 (本文より)
ビザの次はレーベルを立ち上げるために、別の弁護士を訪ねる。なぜ、NYへ? なぜジャズを? そう訊かれるたびに自問自答してきた。その答えがやっとわかったような気がする。ジャズを必死に学びながらも感じていた違和感。新しいジャズのオリジナルを作る。そのためにここにいる。ぴがいる。そして、仲間がいる。
「千里。俺は知っている。おまえは最初何も出来なかった。オリエンテーションの日。そしてあれから徐々にジャズが出来るようになったのも覚えている」
卒業リサイタルの後、学校で一番厳しく口の悪い教授が肩を抱きしめてくれた。
ニューアークにぴと降り立ってから4年半。47歳で留学を決意してからの日々は雪や雨の日と同じくらい晴れた日もあった。でも。ニューヨークに来てよかった。ジャズの道は始まったばかり。感動のニュースクール卒業式へ。【読了時間 約30分】
大江千里・おおえせんり■1960年9月6日大阪生まれ。1983年デビュー。2008年、ジャズピアニストを目指し愛犬ぴを連れてNYの音楽大学へ留学。ジャズアルバム『boys mature slow』『Spooky Hotel』をリリース。東京ジャズ、ブルーノート出演のほか、現在は米国内を中心に積極的なライブ活動を展開中。日本家屋体験エッセイ『僕の家』全4冊、NYジャズ留学の前半を綴った「9th Note」シリーズ全12冊配信中。2015年2月3rdアルバム発売、4月単行本発売、5月ライブ決定!