「まったく、人間観察(リハビリ)も一苦労だよ」 自分は情報屋である。そんな事を嘯く、一人の男がいた。ただ、本当に『情報屋』と呼ぶべき生業をしているのかどうかはさておき、彼が数多の情報を手にする力を持っている事だけは確かである。 彼は決して正義の味方などではなく、さりとて悪の手先というわけでもない。自分がないのではない。ただ、彼は平等なだけだった。己の欲望に、果てしなく素直なだけだった。 『人間』。そんな単語のすべてにくるまれた有象無象の玉石達を、彼はひたすらに愛し続ける。 彼はただ、人を愛しているだけなのだ。たとえその結果、愛する人間を壊す事になったとしても。情報屋は、壊れてしまった人間も平等に愛でる事ができるのだから──。