50歳を目前にして、大江千里は考えた。このまま年をとってもいいのだろうか、と。
定期的なライブと創作活動。気心の知れた友人。行きつけのレストラン。都会での犬との暮らし。
2008年、大江千里はNYの音楽大学・ニュースクールに留学する。今までの一切合財を捨て、愛犬1匹をつれて。
ところが、レベルテストに寝坊し、「ジャズができていない人がいる」と20歳の同級生に言われ。歯をくいしばって練習すると、肩が動かなくなる。
タイの留学生テップとのルームシェア、現役ミュージシャンによる刺激的な授業、アンサンブルの発表会、同級生の歌姫たち、愛すべきスタンダードナンバー、そして愛犬・ぴ。「ジャズ」にまつわるものに囲まれて、ひとつひとつ、できるようになっていった。
登場するスタンダードナンバー、ミュージシャンは100を越える。留学生活の最初の2年間を綴る「カドカワ・ミニッツブック」の連載12編に処女小説「いたち」を収録したコンプリートバージョン。【読了時間 約270分】
目次
B♭ 憂鬱のはじまり。
E♭ 痛み分けはジャズの味
A♭ ジャズ学校の異邦人
D♭ ジャズに焦りは禁じ手か?
G♭ ジャズをひと休み。陽はまた昇る
B 秋学期よ、こんにちは
E 双子のフェニックス
A 二ューヨークにいる亀
D キンモクセイの咲く頃に 上
G キンモクセイの咲く頃に 下
C 長いトンネルを抜けて
F 9番目の音に誘われて
いたち
大江千里・おおえせんり■1960年9月6日大阪生まれ。ジャズアルバム『boys mature slow』『Spooky Hotel』をリリース。現在は米国内で積極的なライブ活動を展開中。