朝起きると「C(ド)~」とロングートーンの声を出してみる。
ピアノのCとピタリとあえば、宝くじで1等賞が当たった気分だ。
僕は「絶対音感」の持ち主ではない。フレーズ、和音、何をとってもジャズにはなっていない。
ほかの生徒はできあがっている人もいるというのに。
ポップスの血をジャズの血に入れ替えなければならない。
アンナ先生に訴えると、彼女はこう言ったのだ。
「あなたはジャズを始めたばかりでしょ。死ぬほど練習して、これからなのよ。
それから人と比べるのはナンセンス。あなたにはあなたの培ってきたポップセンスと作曲があるでしょ」
僕の目から熱いものがこぼれた。
エリザベス・ローニンガー、ジェラルド・ダンジェロ、チャールズ・トレヴァー。新しい先生たちがぞくぞく登場!【読了時間 約15分】
大江千里・おおえせんり■1960年9月6日大阪生まれ。1983年デビュー。2008年、ジャズピアニストを目指し相棒(ダックスフント♀)を連れてNYの音楽大学へ留学。ジャズアルバム『boys mature slow』『Spooky Hotel』をリリース。東京ジャズフェスティバルには2年連続出演。現在は米国内で積極的なライブ活動を展開中。NYジャズ留学の前半を綴った「9th Note」シリーズ、後半を綴った「13 th Note」シリーズ、「僕の家」シリーズを電子書籍で配信中。