そこは豊かな村であった。木々は生い茂り、人々は心が穏やかで、交易も順調に進み、ますます繁栄していった。だが一大事が起きた。村の長老の孫が大鷲にさらわれてしまったのだ。村中が大騒ぎをしている時、レプケという青年が通りかかった。彼は事件の様子を聞くと、宙にむかって念じはじめた。すると不思議にも空の彼方から大鷲が舞い戻り、子供は無傷のまま両親の腕の中に帰ってきた。奇蹟を行なったレプケ――彼こそラ・ムーの主導者聖双生児の一人、サハムであった。彼は名前を変えて村々を巡遊しながら、アムの将来に備えて情報を集めていたのだ。しかし、彼が長老の美しい娘とめぐり会った時、ラ・ムーの運命は大きく変わっていた。