ティーエは山を下りた。人間の世界に戻るために…。最初の目的地はハイセレの村。ケントウリ族を神と崇める素朴な人々の住む山里だ。だが、初めて出会った人々の思念は、ティーエをとまどわせ、恐怖させた。ティーエは逃げだし、森に隠れた。その夜、山は嵐に包まれた。そのころ…。イルアデルは決断を迫られていた。グラウルは囁く、あなたが生き残り、王位に就くには、他に途はないのだ、と―。父王暗殺。イルアデルの心は嵐の中の木木の梢のように揺れた。だが…。ティーエ、ラクシ、ボイス、そしてイルアデル。若者たちが出会い、その運命を絡み合わせる以前、それぞれの道を歩みはじめたばかりの頃を描く、ファン待望の書き下ろし短編集。