あらすじ春子は偏屈なおでん屋台の店主である。酒はひとり二合まで、銘柄はひとつ。冷ならそのまま、燗なら徳利に入れて温める。おでんのほかは、梅干の入った白飯にごま塩をまぶした握り飯と、甘いいなりずし。そんなただのおでん屋なのに、いつも立ち寄る稲荷に二度柏手を打つと、知らない世界に飛ばされるようになってしまった。だがしかし、春子は何も変わらない。いつでもどこでもおでんを、客に食べさせるだけだ。おでん屋がただただ訪れた客に、あたたかいおでんを食べさせる。ただそれだけで運命が少しだけ変わった、様々な事情を抱える人々が交差して生きる世界の、ぽかぽかおでん群像劇。