抗いようもなく恋に落ちる日が、
自分にもいつか来る。そう信じてきた──
南米の小国エストラニオの影の支配者といわれる
シウヴァ家の総帥となって一年九ヶ月。
十八歳になる蓮は、よき理解者で側近でもある鏑木の献身的な庇護のもと、
多忙な日々を送っていた。けれど、シウヴァという圧倒的な権力と、
その中心である存在ゆえに、蓮は同世代の友人をつくることもできず、
まだ恋も知らずにいた。そんな蓮にとって、鏑木は数少ない心を許せる
相手であり、鏑木と過ごした十六歳のある一夜を忘れられずにいた。
この気持ちがなんであるのかはわからない、
でも、鏑木には自分のそばにいてほしい──そう願う蓮と、
主従としての一線を越えないよう距離を置こうとする
鏑木の間には溝ができてしまう。
そんなとき、ある事件が起きて!?