「過去は水に流さないか?」「遅すぎるわ。もう元には戻れない」ロマーノの言葉に、ジャッキーはそう答えるしかなかった。姉の結婚式に出席するため、彼女は故郷の町に帰ってきた。でもかつて捨てられた初恋の相手まで戻っているとは思わなかった。ロンドンでファッション雑誌の編集長をしているジャッキーは、故国のイタリアでトップブランドを率いるロマーノに、仕事の上でも会うことがないよう、ずっと避けてきた。数カ月前、事情が大きく変わるまでは――。私はいずれ、いやでもロマーノに話さなければならない。彼には娘がいると。十六年前養子に出したその子にやっと巡り会えたと。■イタリアの小さな町を舞台に、毎回心温まるロマンスをお届けしている〈恋人たちのレストラン〉。作家競作のミニシリーズ三作目は、恋人たちの胸に今も熱く迫る十代の夏の日の出来事を、期待の作家フィオナ・ハーパーが描きます。どうぞお見逃しなく。