特集 それでも民主主義
アリストテレスが民主主義(デモクラティア)を語った時、
それはプロの政治家を選挙で選ぶ現代の常識とは異なって、
市民がくじ引きによって交代で公職を担当する政治制度を意味していた。
しかもそれは、多数者(デモス)が自らの利益のために
国家(ポリス)を支配する政治のことで、
公益のために市民が協力する国制(ポリティア)の逸脱型とされた。
つまり良き政治体制を意味していたわけではない。
今日、民主主義はほとんど唯一の正しい政治のやり方を意味し、
それに疑問を呈することはとりわけアメリカでは異端である。
だが現実の民主政治に選挙民が不満を募らせているのは、
政権交代後の期待が幻滅に変わった日本だけではない。
民主主義の総本山を自認するアメリカでもワシントンへの不信は強いし、
ヨーロッパでは高邁な欧州統合の理想は、
草の根の民衆の反発に晒されている。
他方で非民主的な中国は世界で存在感が急速に増している。
もし権威主義体制がうまくいくのなら、
なぜ民主主義でないといけないのか。
民主主義とはいったい何で、その可能性と限界は何なのだろうか。
改めて民主主義を正面から考えてみようではないか。