コーンウォールの海岸に聳える風変わりな葉色の三股の樹。通称を〈孔雀の樹〉といい、聖者の祈りによって歩き回る力を手に入れ、獣や人をむさぼり食う災いの樹の伝承に連なる存在だった。大地主ヴェインはこの怪樹に登る賭けをして森に入るが、以降忽然と姿を消してしまう。怪奇趣味に満ちた傑作中篇「高慢の樹」ほか、謎を読み解くことに長けたスティーヴン神父が不可能犯罪に挑む表題作、夢想家の姪と実際家の甥の先行きを案じた公爵が取った奇策が思わぬ喜劇へと発展する、本邦初訳の戯曲「魔術」など、五篇の中短篇を新訳で贈る。巨匠の多彩な魅力が凝縮された日本オリジナル作品集。/【収録作】高慢の樹/煙の庭/剣の五/裏切りの塔/魔術――幻想的喜劇/訳者あとがき/解説=垂野創一郎