容姿も家柄も一流の彼が、なぜ私と契約結婚?
声を聞くだけで、胸の奥がいつも「ドキン」と鳴る。愛犬のために通っていたドッグランで、千鶴は彼と出会った。犬にも千鶴にも優しい笑顔の素敵な人――西園寺響さん。出会って以来、ずっと淡い恋心を募らせていた千鶴だったが、ある日、事件は起きた。千鶴の実家である温泉旅館の買収話が持ち上がったのだ。不安な気持ちで千鶴も話し合いに参加すると、そこには響の姿があった。しかも、古き良き温泉町を金で根こそぎ買収しようとする大手グラツィオーゾグループの副社長として――。見慣れぬスーツ姿、冷たい声の響は、千鶴の知っている優しい彼とはまるで別人だった。とまどう千鶴に、響はこの買収を1年間猶予してもいいと言い出した。「ただし条件がある。君が俺と結婚すること。契約結婚という形でね」容姿も家柄も一流の彼が、なぜなんのメリットもない私と契約結婚を望むの?