──成田空港検疫所600日間の闘いの記録と元検疫所長からの提言──
空港検疫は、国内へのウイルス流入を阻止する最初の関門である。
新型コロナ感染症のアウトブレイクにおいて、その水際の最前線で何が起こっていたのか?
元成田空港検疫所長による記録の書。
普段、ほとんどの人が意識することのない空港検疫だが、新型コロナウイルスの流行によって注目を集め、水際(出入口)=検疫というイメージから、時に「お粗末」「対策が粗い」など批判の的となった。 圧倒的な人員不足の中、現場ではさまざまなドラマも起こっていた。
検疫体制強化のために机や椅子をはじめとした備品をレンタルしようとしても、ウイルス汚染の風評被害を懸念し、リース業者は頑なに対応を拒否した。
帰国する日本人たちの横暴な態度にも悩まされた。
そして、パンデミック下のオリンピックでの検疫という、前代未聞の事態も経験することになる。
未曾有のパンデミックに検疫が混乱したのは事実。しかし、今回生じた数々の問題は、従来、検疫制度が抱えてきた問題が、コロナという極めて厄介なウイルスによって顕在化されたことによるところが大きい。この経験を検証し、改めるべきことは改めていかないと、次、新たなウイルスがやってきたとき、私たちは同じ過ちを繰り返すことになる、というが著者の切実な思いである。
2020年春から始まった新型コロナウイルスのパンデミックの記録と、この先、議論・検証される検疫制度改革に対する現場からの提言。