愛しくて愛しくて…淋しくて淋しくて…。
1944年、フィリピン・ミンダナオ島。
「ミンタルの虎」と呼ばれた男のそばには、いつも妻からの手紙があった。
戦後70年の時を超え、あなたに伝えたい「想い」がここにある。
太平洋戦争の激戦地、フィリピン・ミンダナオ島。そこで独立歩兵第353部隊を率いた山田藤栄少佐は極限の状況を生き延び1946年に復員。
福井県に住む家族の元に帰ってきたとき、リュックの中にあったのは氷砂糖と干しぶどう、そして妻が書いた115通の手紙の束だけだった――。
この手紙は、日中戦争が勃発した1937~38年にかけて、妻・しづゑさんが戦地にいる夫・藤栄氏に宛てたもの(いずれも故人)。
藤栄氏はこれを綴じて保管し、のちにこの手紙の束をリュックに忍ばせ、フィリピン・ミンダナオ島に赴任。
戦地での活躍ぶりから「ミンタルの虎」と称されます。その戦場は、藤栄氏が率いた兵員1152人のうち戦没者987人で、9割が餓死したという“地獄の万華鏡”でした。そんな苛酷な戦場を最後までともに歩んだのが、この115通の恋文だったのです。
手紙に綴られた妻のせつない思い、長女が生まれた喜びを伝える言葉の数々が胸を打ちます。
この手紙の存在が、藤栄氏が戦地を生き延びる支えとなったことは想像に難くありません――。
戦後70年という節目に、妻から夫への恋文を通して、夫婦の愛、家族の愛、そして二度と戦争という悲劇を繰り返してはいけない、そんな「想い」を伝える一冊。