ロザリンドは従者も連れず、徒歩でファロン公爵の屋敷にたどり着いた。
“悪魔公爵”と噂される男の屋敷を女が1人で訪れるなど正気の沙汰ではないが、
誰も頼る者のないロザリンドにとって、ファロンだけが残された救いだった。
ギャンブル好きの父は常に金に困っており、金目のものならなんでも売る。
そしていま、娘さえも売り飛ばそうとしているのだ。好色な年寄りの貴族に。
私があの老人のものになるより早くファロンと結婚してしまえば、父も手を出せない。
突拍子もない申し出を携えて現れた娘に、ファロンは思いがけない提案をした。
妻としてふさわしいかを見る試験に合格すれば、おまえを娶ってもいいと。
いったいどんな“試験”なのかとロザリンドがおそるおそる訊くと、公爵は答えた。
「おまえがわたしの愛撫によって絶頂に達するところを見たい」