加井の息子が野球をやりたいと言い出した。困った加井は博多新聞の岡に相談する。実は加井は、元プロ野球選手で八百長疑惑で球界から永久追放を受けた身だった。彼の無実を信じ、擁護する記事を書き続けていた岡は、それ以来20年に渡って記事を書かず、『書かずの岡』と呼ばれている。全てを子供に打ち明け、納得してくれたらキャッチ・ボールをしろと、岡はアドバイスした。そして20年ぶりに記事を書く……。新聞記者魂を描いた佳作短編集。収録作「多摩川発=書かずの岡さん」他に「たった一行のスキャンダル」「人生の一大事」「欠陥報道」「夏の夜の夢」「柩と杭」「テレビ症候群」「サイン」「予定稿」の全9話を収録。