憂鬱(メランコリー)――この厄介なる気分を、人類はどのように捉え、対処し、表現してきたのか?
古代から現代に至る芸術・医学・哲学を渉猟し、時に死や恐怖と、時に創造的知性や天才と結びつけられ、また治療の対象ともなってきた「メランコリー」の系譜を明らかに。さまざまな災厄に見舞われる現代という時代――親しい人との別れ、死や病への恐怖、ストレスフルな仕事や人間関係、経済格差、パンデミック、気候変動……――を知的に捉え、生き抜くためのパースペクティブは、その「遺産」のなかからもたらされる。
泰斗による決定版文化史。
[本書の内容]
第1章 古代から中世へ
1 古代の苦悩
2 病理から気質へ――四体液説
3 天才の憂鬱――プラトンからアリストテレスへ
4 医学の中世
5 土星のメランコリー
第2章 ルネサンスと宗教改革
1 幾何学の憂鬱
2 宗教改革
3 遠近法の誕生
4 宗教的メランコリー
第3章 近代の始まり
1 モンテーニュ
2 デカルト
3 治療されるメランコリー
4 バロックの想像力
第4章 現代へ
1 精神医学と悪魔
2 精神分析の登場
3 喪とメランコリー
4 根源的な喪失