【内容紹介・目次・著者略歴】
人間が手に取るものは必ず消滅する.ゆえに人間にとって本当に現実的であるものは潜勢態,つまり憧憬としてのみある.現代の徹底した相対主義の中でなお我々が絶対なるものに触れうるとしたら,どのようにして可能か.著者は相対であることそのものによって人間は絶対に通じているとする.この二重性の現実を絶対無と神との関係から信即不信の境地として示し,イエス伝学の考察を通して近代的学問の真理論的反省を論ずると共に,全体性の回復を試みるニュー・サイエンスに着目して学問と神秘の関係を解明.更に途上の生という人間理解に基づき,その未完結性ゆえに可能な他者理解と宗教間対話の場を提示する.キリスト教のみならず、現代における宗教の意義や知識論の課題に関心をもつ読者に豊かな示唆を与える.
【目次より】
まえがき
目次
第一章 序説・絶対無と神
一 無神論と否神論
二 現代神学の古典時代
三 神学と言葉
四 西洋の無と絶対無
五 真如の月
六 美的宗教について
第二章 憧憬ということ
一 西谷啓治博士の虚無について
二 空について
三 憧憬について
四 憧憬と絶対矛盾的自己同一
第三章 憧憬とネオ・ロマンティシズム
一 ロマンティシズム的思考の未完結性ということ
二 ヘルダーのロマンティシズム
三 ヘルダーとキリスト教
四 「非-他者」について
第四章 神秘と学問
一 史的イエスと信仰のキリスト
二 ニュー・サイエンス
三 サイエンス・ウォーズ
四 不統一における統一
第五章 科学と宗教
一 曼荼羅について
二 一如と断絶
三 聖霊の神学
四 科学と宗教
第六章 宗教と芸術
一 カントと西谷啓治博士の芸術論
二 パウル・ティリッヒの芸術論
三 無と芸術的表現
第七章 日本文化とキリスト教
一 宗教の「宗」について
二 宗教の自己否定的契機
三 日本文化と宗教の美的指向
四 もののあはれ
五 「宗」と東西宗教の対話
あとがき
注
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小田垣 雅也
1929年生まれ。青山学院大学、ドルー大学卒。日本基督教団補教師、国立音楽大学元教授。哲学博士。著書に『解釈学的神学』『知られざる神に』『哲学的神学』『現代思想の中の神』『神学散歩』『ロマンティシズムと現代神学』『四季のパンセ』、学術文庫に『現代のキリスト教』など多数。訳書に『神への誠実』『文化史の中のイエス』などがある。