【内容紹介・目次・著者略歴】
「技術的世界の意味は覆蔵されている」。ハイデッガーが家郷の人々を前に語り出したこの言葉のうちに、本書は、ハイデッガーの思索の根本契機と、現代世界との接点を見出す。ハイデッガーが西洋形而上学との対決を通して読み解いていった西洋の歴史は、同時に、「制作(ポイエーシス)」の知として「芸術」と「技術」両者の由来である「テクネー」が現代テクノロジーにまで展開した歴史でもあった。その展開は、テクノロジーとアートの新たな関係を探る種々の試みとなって今日もなお不断に生成している。本書は、初期フライブルク時代から晩年に至るハイデッガーの有(存在)の問いの展開を「技術と芸術」の主題のもとに一貫して読み解き、家郷喪失性という現代人の運命を見据えながら、「技術的世界に覆蔵されている意味」の解明を通して、ハイデッガーの思想の現代的意義を探ることを試みる。
【目次より】
序章 問題の所在
第一章 意味と世界 思索の端緒において
第一節 現象学と解釈学 意味への問い
第二節 アリストテレスの受容 ポイエーシスとテクネーの視点から
第二章 『存在と時間』の思索圏
第一節 存在の意味への問しとテクネー
第二節 『存在と時間』の途絶へ
第三章 芸術と真理
第一節 道具と作品 エルゴンの分析
第二節 作品と真理
第三節 真理と芸術
第四章 性起の思索空間
第一節 性起
第二節 省慮 意味から真理へ
第三節 芸術と技術 第一の主題化
第五章 ニーチェとの対決 ニヒリズムの本質への問い
第一節 芸術をめぐるニーチェとの対決
第二節 永劫回帰思想 創造と瞬間
第三節 ニヒリズムの完成としてのニーチェ
第六章 四方界と集立態
第一節 世界と物
第二節 技術の本質への問い
第三節 芸術と技術 第二の主題化
第七章 言葉と世界
第一節 思索と詩作
第二節 情報としての言語
第三節 家郷としての言葉
第八章 技術時代における可能性
第一節 放下と場所
第二節 芸術の可能性
結び
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秋富 克哉
1962年生まれ。京都大学文学部哲学科卒業、京都大学大学院文学研究科博士後期課程宗教学専攻学修退学。文学博士。フンボルト奨学生としてミュンヘン大学に留学。京都工芸繊維大学工芸学部教授。
著書に、『芸術と技術』『共同研究 共生 そのエトス、パトス、ロゴス』(共著)『再考 三木清』(共著)『日本発の「世界」思想』(共著)『続・ハイデガー読本』(共著)などがある。