【内容紹介・目次・著者略歴】
中・東欧におけるギリシア・カトリック教会は、ビザンティン典礼と東方教会法に従いつつ、ローマ教皇の首位権を認めるカトリック教会の一組織である。本書はわが国で初めてその歴史・教会法・典礼・神学を紹介し、その本質が「十字架上の聖体論」にあることを指摘。この聖体共同体からの光を源に、古典文献学・古代学・聖書解釈・教父学の分野に展望を披くと共に、仏教・神道など東洋思想に対してもこの共同体を基点に意義づけを試みる。さらには仏教に旧約的意味づけを与えて、中欧研究や古典古代学・神学のみならず異文化理解や宗教間対話にも重大な示唆をもたらす画期的業績。
【目次より】
第 I 編 伝承 ハンガリーのギリシア・カトリック教会総説
第1部 教会史と教会法
第1章 伝承と国際性 ハンガリーのギリシア・カトリック教会
第2章 スロヴァキアの春 『東方教会法典』の規定と現代の「殉教者」たち
第3章 聖バジリオ修道会の形成と展開 ハンガリーの場合を中心に
第4章 東方カノン法の世界へ クラクフからの法比較論的断想
第5章 『東方教会法典』の神学 「十字架上の聖体」の内的構造
補論1 中欧概観 旅の記録
第2部 典礼と神学
第6章 ビザンティン典礼による聖体祭儀の神学
第7章 「テュピコン」をめぐる神学 修道院典礼から司教区の典礼へ
第8章 「聖週間」から「光の週」へ
補論2 欧米文化研究におけるハンガリー語の意義 語順を中心に
第 II 編 展望 古典古代学に向けて
第3部 文献学・古代学・教父学
第9章 ビザンティン世界における「知」の共同体的構造
第10章 マーチャーシュ王とコルヴィナ文庫 15世紀ハンガリーの栄華
第11章 ヘロドトスの「父性」 「東方予型論」に向けて
第12章 ヘロドトスの射程 普遍史・他者性・予型論
第13章 モプスエスティアのテオドロスにおける予型論の射程 典礼と聖書解釈の接点
第14章 アレクサンドリアのクレメンスにおける「訓導者」
第15章 アレクサンドリアのクレメンスにおける「覚智者」
第4部 東方予型論
第16章 「即身成仏」と「神化」 東方キリスト教神学から見た密教思想
第17章 「三密」と「三位一体」 密教とビザンツ神学における「言葉」の位置と意義
第18章 「般若」と「認識」 菩薩行と東方教会神学
第19章 慈雲『南海寄帰内法伝解纜鈔』の現代的意義 「動詞語根からの古典古代学」に向けて
第20章 慈雲と華厳思想 「古典古代学基礎論」のために
結章 戒体と聖体 旧約としての仏教
あとがき
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秋山 学
1963年生まれ。筑波大学教授。東京大学文学部、同大学院人文科学研究科西洋古典学専攻修士課程、総合文化研究科超域文化科学専攻博士課程修了。博士(学術)。専門は、西洋古典学、地中海学、教父学。
著書に、『教父と古典解釈』『慈雲尊者と悉曇学―自筆本『法華陀羅尼略解』と「梵学津梁」の世界』『ハンガリーのギリシア・カトリック教会』など、
共訳書に、『ニュッサのグレゴリオス』『中世思想原典集成2 盛期ギリシア教父』『中世思想原典集成1 初期ギリシア教父』『ギリシア文学概説』『中世思想原典集成20 近世のスコラ学』などがある。