【内容紹介・目次・著者略歴】
秦に先行する夏殷周の時代(BC.2000頃~.BC220年頃)とは、中国独自の文化が形成された「原中国」であった。本書は、諸子百家の系譜を辿るという従来の手法を排し、最新の考古学的資料と伝来文献を有機的に結びつけ、原中国の社会の全体像と人びとの日常的な心のあり方を、明確なイメージをもって共感的に描き出す。彼らの強固な祖先観念と血族意識は一族や国家の長存、「天地長久」を願う熱い思いの現れであった。当時の支配層の意志決定に参与した史官は文字を独占する最高の知識人であり、天地人についての歴史の知識を蓄積する過程で万物の運行を司る天道を見出した。そして『老子』とは、天地長久の統治と処世を実現する教訓、格言、警句を、天道をも越える「道」の立場から編集整理したものに他ならなかった。豊富な史料と明快な論証により、中国文化の本質解明に一石を投じる画期作。
【目次より】
はじめに 本書の目的と立場
第一節 先秦とはいかなる時代か、いかに理解すべきか
第二節 史料について
第一部 血族社会の世界観
問題の提示
第一章 古代人と髪
第一節 髪と刑罰・兵士俑の髪型
第二節 髪の機能
第三節 髪の意味
第四節 原中国における髪の意味
まとめ
第二章 人間と植物の類比的認識
第一節 土毛・不毛
第二節 文王孫子、本支百世
第三節 『詩経』と類比的認識
まとめ
第三章 血族の長期的存続
第一節 世という文字
第二節 生命の継起的連続
第三節 舜の子孫
第四節 血縁の長期存続と祭祀
第五節 世系・世本
第六節 世の意識
第七節 不死鳥の陳国
第八節 祭祀継続の理由
まとめ
小結 戦国時代へ
第二部 『老子』思想の歴史的研究
問題の提示
第一章 『老子』思想の本質とその背景
第一節 『老子』の本質
第二節 再読「鄭伯、段に〓に克つ」
第三節 『老子』的処世の遍在
第四節 范氏一族の処世
第五節 支配層の意志決定
まとめ
第二章 歴史と『老子』
第一節 歴史とは
第二節 他族の歴史の教訓
第三節 鑑としての歴史・のっとるべき善
第四節 敬の処世
第五節 敬と『老子』
第六節 敬の具体化
第七節 歴史の事実の抽象化と『老子』思想
第八節 『老子』的思想の遍在
まとめ
第三章 天道と道
第一節 史官なるもの
第二節 道と『老子』
第三節 史官の直筆
第四節 シャーマンから史官へ 夏后啓とその子孫
まとめ
おわりに
あとがき
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高木 智見
1955年生まれ。 中国哲学、中国史学者。山口大学名誉教授。名古屋大学文学部史学科卒業、同大学院文学研究科史学地理学満期退学。博士(歴史学)。専門は中国先秦文化史・中国古代思想。
著書に、『先秦の社会と思想 』『孔子 我,戦えば則ち克つ』『内藤湖南 近代人文学の原点』など、
訳書に、楊寛『中国都城の起源と発展』(共訳) 黄石林, 朱乃誠『中国考古の重要発見』鄭振鐸『伝統中国の歴史人類学 王権・民衆・心性』朱淵清『中国出土文献の世界 新発見と学術の歴史』などがある。