【内容紹介・目次・著者略歴】
〈人間の内なる社会〉という独自な視点を導入し、個人と社会の対立を超えた第三の領域を示した新しい社会思想概説。
世界は激しく変化し、日常生活もまた価値観の多様性に晒されている。われわれはそれらの身近な現実をいかに理解したら良いのであろうか。本書は伝統や習俗、常識などに依存することなく、社会と人間の関わり方を歴史的・主題的に根本から考察する。〈社会の内なる人間〉という伝統的視点から〈人間の内なる社会〉へと独自な展開を試みることにより、個人と社会の対立を超えた第3の領域としての《間柄》の存在を現象学的に明らかにする。転換期の最中に書き下ろされた新しい社会思想概説。定評の『倫理学講義』の姉妹編。
【目次より】
はしがき
I 人間存在の社会性
1 人間存在のパラドックス
2 「間」の範疇および「相互性」「間柄性」「共同性」
3 個人と社会との関係
4 社会思想とそのダイナミックな歴史的展開
5 「社会の内なる人間」と「人間の内なる社会」
II 社会の内なる人間
1 社会の所与性と原関係性
2 「閉じた社会」と「開いた社会」
3 古代社会の特質
4 古代社会の対立する二類型
5 「閉じた社会」から「開いた社会」へ
III 世俗社会からの解放と「神の国」の理念
1 国家社会を形成している根源への問い
2 キリスト教の社会学説
3 中世社会の成立とその特質
4 アウグスティヌスのキヴィタス学説
5 トマス・アクィナスの法思想
6 キリスト教共同体の終焉と近代への移行
IV 人間によって形成される社会
1 近代社会成立期における人間像の特質
2 近代の合理主義と理性的自律
3 プロテスタンティズムの職業倫理と聖俗革命
4 社会契約説の展開
ホッブズの社会契約説 ロックの社会契約説 ルソーの社会契約説
5 カントの社会学説
V 伝統社会と近代社会
1 共同体の歴史的発展と現代の問題
2 共同体の弁証法的理解
3 共同体の構成論的理解
4 共同体の類型論的理解
VI 近代的主観性から間主観性へ
1 近代の理念とその崩壊
2 近代的主観性に立つ個人主義的合理主義の諸形態
3 カントの超越論的主観性と実存哲学の主体性の問題
4 近代主観性の哲学における他者の喪失と発見
5 現象学における他者知覚の理論
6 対話の哲学
VII 人間の内なる社会
1 日常生活の間主観的性格
2 人間の内なる社会
3 関係行為と人間の内なる社会
注
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金子 晴勇
1932年生まれ。倫理学者。聖学院大学客員教授。京都大学文学部卒。同大学院博士課程中退。文学博士。専攻は、キリスト教思想史専攻。
著書に、『ルターの人間学』(学士院賞)『対話的思考』『宗教改革の精神 ルターとエラスムスとの対決』『アウグスティヌスの人間学』『恥と良心』『ルターとその時代』『対話の構造』『近代自由思想の源流』『キリスト教倫理入門』『倫理学講義』『愛の秩序』『聖なるものの現象学 宗教現象学入門』『マックス・シェーラーの人間学』『ヨーロッパの思想文化』『人間学から見た霊性』『宗教改革者たちの信仰』『霊性の証言 ヨーロッパのプネウマ物語』『ヨーロッパ思想史 理性と信仰のダイナミズム』など、
訳書に、C.F.v.ヴァイツゼカー『科学の射程』(共訳)マルティン・ルター『生と死について 詩篇90篇講解』C.N. コックレン『キリスト教と古典文化 アウグストゥスからアウグスティヌスに至る思想と活動の研究』エラスムス『対話集』など多数。