【内容紹介・目次・著者略歴】
自律思想の成立過程を最高善の概念との関連で解明、カント哲学の全体像について新たな見方を呈示する。道徳における判定原理(規準)と実行原理(動機)という二種の原理の区別に着目しつつ、最高善がカントの実践哲学および哲学全体にとってもつ意味の変化を、『純粋理性の批判』から『道徳形而上学の基礎づけ』を経て『実践理性の批判』に至るまで辿る。自律道徳は第二批判において、道徳法則が自由の認識根拠とされるとともに、最高善が純粋実践理性の究極目的として規定されることによって確立する。最後に、形而上学と道徳と宗教との関係を、最高善と知恵と哲学との関係から明らかにし、最高善がカント哲学の核心をなすことを示す。カントにとって哲学の本質は、有限な理性的世界存在者の知恵という意味で理解された“Welt-weisheit”に見定められる。
【目次より】
序論
第一章 カントにおける自由意思の概念
第二章 『純粋理性の批判』における自由の問題
第三章 最高善の概念の予備的考察
第四章 規準論における実践哲学構想 道徳と最高善
第五章 『道徳の形而上学のための基礎づけ』における自律概念の成立
第六章 「基礎づけ」の展開
第七章 『基礎づけ』における道徳法則と自由
第八章 『実践理性の批判』における自律思想の確立
第九章 『実践理性の批判』における最高善
第一〇章 カント哲学と最高善
結び
あとがき
参考文献
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角 忍
1951年生まれ。哲学研究者。高知大学教授。京都大学文学部哲学科卒、同大学院文学研究科博士課程単位取得退学。文学博士。
著書に『カント哲学と最高善』など、
訳書に、『ハイデッガー全集 第51巻』(共訳)レヴィン・シュッキング『読書と市民的家族の形成 ピューリタニズムの家族観』(共訳)マックス・ホルクハイマー『批判的理論の論理学 非完結的弁証法の探求』(共訳) 『カント全集 18 諸学部の争い』(共訳)などがある。