【内容紹介・目次・著者略歴】
「形」とは何か。中国思想が求めたものは「道」であり、形而上なるものを追求する中国文化全体において、形は看過され、主題的に語られることはなかった。本書は、中国藝術理論における形を考察することにより、その中国哲学史における意味を再考する。まずは六朝期と宋代を中心に、形象を無視する絵画理論の発生を考察し、固定しない、混成した形象への志向の登場を山水画の表現を例に論じる。さらに中国藝術における主要概念を検討した上で、漢代に遡って、画像石に表れた死生観に着目、形という存在自体が中国思想を変容させた様子をたどる。最後に、固定的な形象をもたない風景の表現がもつ意味をも考察する。数々の名作を残した中国絵画、その背後にある、形の思想と気の思想の関係を繙いた画期的業績。
【目次より】
はじめに
序章 形について
はしがき
一 「形」の二つの相
二 気象と形
三 箱の思想
おわりに
第一部 気と形象の問題
第一章 気の問題
はしがき
一 六朝に至るまでの気の表現
二 謝赫と顧〓之における気の問題
三 張彦遠における気と六朝の書論
四 六朝文学論における気
五 楽記と気の問題
おわりに
第二章 形象の問題
はしがき
一 造化の跡
二 胸中の竹
三 混成した形象
おわりに
第三章 気象の問題
一 胸中の丘壑
二 文章における気象
三 胸中の竹と胸中の丘堅
第二部 芸術に関わる諸概念の検討
第四章 快の問題
はしがき
一 感性的「快」について
二 芸術理論における「快」
おわりに
第五章 醜の問題
はしがき
一 視覚的な美醜と道徳的な美醜
二 韓愈と梅堯臣
三 山水における醜
第六章 模倣の問題
はしがき
一 第一の転回点 六朝期
二 著録に見える模本
三 第二の転回点 北宋
四 評論家の発想
五 董其昌
おわりに
第三部 思想と図像
第七章 思想と図像
はしがき
一 二つの気のモデルと死の解釈
二 死観と喪葬儀礼
三 祟りと天門
四 崑崙山と西王母
五 もう一つの死後観
六 図像化による思想の変容
おわりに
第四部 風景の問題
第八章 風景の問題(一)
はしがき
一 風景詩の性格
二 風景詩の空間
三 形象と風景
第九章 風景の問題(二)
はしがき
一 光と風の表現
二 浸透
三 気象と浸透、そして散っている気
結論
あとがき
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宇佐美 文理
1959年生まれ。中国美学・美術史研究者。京都大学教授。京都大学文学研究科博士後期課程研究指導認定。専門は、中国絵画、芸術理論。
著書に、『歴代名画記 〈気〉の芸術論』『中国絵画入門』『中国藝術理論史研究』などがある。