【内容紹介・目次・著者略歴】
一人のユダヤ人哲学者として戦争と暴力の時代を生き抜いたエマニュエル・レヴィナス(1906-1995)は、戦後ヨーロッパを代表する倫理思想家として広く知られている。〈他者〉に対する「責任」と「善意」の重要性を説いた哲学者レヴィナス――だが、その思想は、けっして無害でナイーブな道徳論に埋没してしまうものではない。そこに伏在している挑発的かつ複合的な思索の可能性を読み取るべく、本書では、これまであまり語られることのなかったレヴィナスにおける「犠牲」の問題に焦点を当てる。レヴィナスがその知的源泉とした現象学的思考とユダヤ的思考、この二つの要素に鋭く目配りしつつ、一貫した身体論的精査を通じてレヴィナス思想の根本問題に迫ろうとする、新たな哲学的探究の書。
【目次より】
凡例
略号表
序論 レヴィナスの思想における暴力の問い
第一章 生成する自我 存在論から出発して
第一節 主体の誕生
第二節 糧の享受 生について
第三節 欲求の基本構造
第四節 享受の志向性から身体の問いへ
第二章 生活世界と身体
第一節 元基内存在の分析
第二節 欲求の発展形態
第三節 居住としての内部性
第四節 身体の曖昧さ
第三章 意志の冒険
第一節 言語と作品の分割
第二節 意志の二元性 作品・暴力・死をめぐる考察
第三節 裁かれる主体
第四章 近さとしての自己自身
第一節 問いの更新
第二節 存在概念の再定義
第三節 近さから強迫へ
第五章 犠牲の身体
第一節 逆行性の諸問題
第二節 顔の裸出
第三節 苦しみにおける差異
第四節 贈与された主体
第六章 責任の問題をめぐって
第一節 イサクの犠牲 諸解釈の葛藤
第二節 レヴィナス神論の概略
第三節 困難な責任
第四節 愛の宗教の挫折
第五節 有限者の無限責任
結論
あとがき
注
文献表
※この商品は紙の書籍のページを画像にした電子書籍です。文字だけを拡大することはできませんので、タブレットサイズの端末での閲読を推奨します。また、文字列のハイライトや検索、辞書の参照、引用などの機能も使用できません。
伊原木 大祐
1975年生まれ。思想研究者。京都大学准教授。京都大学法学部卒業。パリ第十大学にてDEAを取得。京都大学大学院文学研究科博士後期課程指導認定退学。京都大学博士(文学)。
著書に、『レヴィナス 犠牲の身体』、共訳書にジャン・グレーシュ『『存在と時間』講義』などがある。