【内容紹介・目次・著者略歴】
エコノミーの概念が統治と深く関わった時代、「政治的なもの」と「経済的なもの」の関係はどのように揺れ動いていたのであろうか。本書は、18世紀フランスの言説空間において、富や市場の問題と統治形態や社会編成の問題とを含んだ「政治経済学」の思想的展開を、1760~70年代における穀物取引論争をコンテクストとして論じる。アダム・スミスとも通底する経済的自由主義を唱えながら中央集権体制を理想化したフィジオクラット運動の指導者フランソワ・ケネー。その弟子で、師の政治理論を「合法的専制」という衝撃的な概念へと発展させたル・メルシエ・ド・ラ・リヴィエール。穀物取引自由化の理念をフィジオクラットと共有しつつも、他方でその政治理論からは距離を置き、世論という考え方に期待を寄せたチュルゴーとコンドルセ。さらには二人と同様に世論の重要性を捉えながらも自由化には反対の立場を貫いたネッケルの思想を順にひもとく。長らく政治思想史の大舞台において、モンテスキューやルソーの脇役と位置づけられ、看過されてきた思想家たちに光を当て、フランス啓蒙主義の政治哲学研究に新たな一ページを開く業績。
【目次より】
凡例
序論
第一章 「政治経済学」の言説空間としての穀物取引論争
第一節 穀物取引論争の概要
第二節 穀物取引論争の布置
第二章 経済的自由主義と専制政治 ケネーの「政治経済学」
はじめに
第一節 ポリス批判と「自然な流れ」の擁護
第二節 合理的経済人の理念と新たな秩序観
第三節 経済的自由の享受と後見的権力
小括
第三章 合法的専制の構想と世論の観念 ル・メルシェ・ド・ラ・リヴィエールの「政治経済学」
はじめに
第一節 自然的秩序・明証性・合法的専制
第二節 マブリのフィジオクラット批判
第三節 合法的専制における世論の問題
小括
第四章 「一般均衡」の発見と合理的経済主体の不在 チュルゴーとコンドルセの「政治経済学」………八八
はじめに
第一節 自由化と「一般均衡」の理論
第二節 理論から実践ヘ リモージュでの「実験」
第三節 一七七四年の自由化立法
第四節 合理的経済主体の不在 説得から強制へ
小括
第五章 世論と市場に対する為政者の技法と苦悩 ネッケルの「政治経済学」
はじめに
第一節 世論 抗い難い事実
第二節 市場の理論と現実
第三節 介入主義、あるいは技法としての政治経済学
第四節 ふたたび、抗い難い世論について その両義性
小括
結論
注
あとがき
文献一覧
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安藤 裕介
1979年生まれ。立教大学法学部准教授。立教大学法学部政治学科卒業、同大学院法学研究科に学ぶ。専門は、政治思想史・政治哲学。著書に『商業・専制・世論』、訳書にジョン・ポーコック『島々の発見』(共訳)、ピエール・ロザンヴァロン『良き統治』(共訳)などがある。